『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』クラリスを徹底解説|境遇とリオンとの関係

王立学院で凛と立つクラリスと少し離れた場所から彼女を見守るリオン SF・ファンタジー・アクション
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『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』のクラリスは、ジルクとの婚約破棄で傷つくが、リオンとの出会いを境に過去を乗り越え、書籍版では彼との未来をつかむ女性だ。

クラリス・フィア・アトリーと聞くと、「ジルクの元婚約者」「エアバイクレースで復讐した先輩」「後にリオンへ積極的に迫る女性」というイメージが強いかもしれない。

でも、彼女の物語を最初から最後まで一本につなげて見ると、かなり印象が変わる。

クラリスの核にあるのは、単なる恋人の乗り換えじゃない。婚約破棄によって人生設計ごと崩された女性が、怒りに飲み込まれた時期を経て、最後には自分の意思で次の未来を選ぶ「失恋からの再生」なんだ。

しかも重要なのは、クラリスが成長した結果、「一途で押しの強い女性」ではなくなるわけではないこと。

好きな相手を細かく見るところも、必要だと思えば先回りするところも、チャンスを待つだけでなく自分から動くところも最後まで変わらない。

変わるのは、その強烈な感情をどこへ向けるかだ。

この記事では、TVアニメ第1期第7話「同じイケメン嫌い」で描かれたエアバイクレースを入口に、ジルクとの婚約破棄、リオンが二人を向き合わせた経緯、クラリスがリオンへ惹かれた理由、そしてWeb版とGCノベルズ書籍版で異なる「クラリスの最後」まで整理していく。

原作は三嶋与夢によるライトノベルで、GCノベルズ版は全13巻。最終13巻は2024年3月29日に発売され、シリーズ本編は完結している。現在公開されている公式アニメ情報でも、原作は三嶋与夢、レーベルはGCノベルズと案内されている。

なお、ここからはアニメ第1期だけでなく、原作小説最終巻およびWeb版終盤までの重大なネタバレを含む。

クラリスとは?ジルクの元婚約者だったアトリー伯爵家令嬢

クラリス・フィア・アトリーは、アトリー伯爵家の令嬢で、リオンたちより上の学年にいる先輩だ。

物語上もっとも重要な肩書きは、攻略対象の一人であるジルク・フィア・マーモリアの元婚約者であること。

TVアニメでは第7話「同じイケメン嫌い」で本格的に登場し、クラリス役を鈴代紗弓、リオン役を大塚剛央、ジルク役を鳥海浩輔が担当している。第7話にはクラリスを慕うダンも登場し、近藤隆が演じている。

初登場時のクラリスは、決して穏やかな令嬢には見えない。

ジルクへの怒りをあらわにし、その感情はエアバイクレースで実際の妨害行為へ発展している。

だからアニメを第7話だけ切り取れば、「婚約を破棄されたことを根に持って復讐する怖い先輩」と見えても不思議じゃない。

ただし、そこで止めるとクラリスという人物の半分しか見えないんだ。

彼女を慕うダンがリオンへ説明した内容から分かるのは、クラリスが普段から周囲へ横暴だったから人が従っているわけではないということ。

むしろダンはクラリスへの恩義を強く感じており、彼女が本来は面倒見のいい人物であることを語る。

つまり第7話で描かれる荒れたクラリスは、平常運転のクラリスではない。

ジルクとの婚約破棄によって、それまで保っていた感情のバランスが崩れた状態なんだ。

ここを押さえておくと、リオンとの出会い以降に彼女がどう変わったのかも見えやすくなる。


クラリスはなぜ荒れた?ジルクとの婚約破棄で失ったもの

クラリスがジルクへ強烈な怒りを向けるようになった最大の理由は、もちろん婚約破棄だ。

ただ、「恋人に振られたから怒った」だけでは、この出来事の重さを十分に説明できない。

クラリスとジルクは、学生同士が自由恋愛で付き合っていたカップルではなく、貴族社会の中で将来を前提とした婚約関係にあった。

貴族の婚約には本人同士の感情だけでなく、家同士の関係、将来の立場、社交界での評価まで絡む。

だからクラリスにとって婚約破棄とは、恋愛が一つ終わっただけじゃない。

「この人と将来を築く」という前提で積み上げてきた人生そのものを突然ひっくり返された出来事なんだ。

しかも問題は、ジルクがどう別れたかにある。

TVアニメ第7話では、ダンがリオンへ事情を話す中で、ジルクが急に婚約を破棄し、手紙を送っただけでクラリス本人ときちんと向き合おうとしなかったことが示される。

そしてジルクはマリエの側へ行ってしまう。

これではクラリスからすれば、関係が「終わった」というより、途中で会話そのものを打ち切られたようなものだ。

恋愛では、別れを選ぶこと自体を罪にはできない。

ジルクがクラリスとの関係を負担に思い、別の相手を選ぶ感情そのものまで否定することはできないと思う。

でも、別れる自由と、長く続いた関係をどう終わらせるかは別問題なんだ。

ここがクラリスとジルクを見るうえで一番大事なポイントだと思っている。

ジルクにはクラリスを愛し続ける義務はない。

一方で、婚約者として将来を共有してきた相手に対し、直接向き合わないまま関係を切れば、相手へ大きなしこりを残す。

クラリスの怒りは、まさにその「終わらせてもらえなかった感情」から膨らんでいったように見える。

もちろん、だからといってレースでの妨害まで正当化できるわけじゃない。

クラリスが傷ついたことと、その後に彼女が取った行動の是非は分けて考える必要がある。

ここは作品も意外と冷静だ。

クラリスを完全な被害者として美化するのでも、単なる逆恨みキャラとして捨てるのでもない。

深く傷ついた結果、本人も間違った方向へ進んでしまった人物として描いている。

僕はこの曖昧さこそ、クラリスが記号的な「元婚約者キャラ」で終わらない理由だと思う。


エアバイクレースで何が起きた?リオンがジルクに謝罪させるまで

クラリスの転機を理解するうえで、TVアニメ第7話「同じイケメン嫌い」はかなり重要だ。

公式の第7話あらすじでは、学園祭最終日のバイクレースにジルクが出場するものの、元婚約者の取り巻きから妨害を受けて大きな傷を負い、騒動がリオンへ飛び火するという流れが示されている。

まずレースに出場していたのはジルクだ。

ところがクラリス側の人間による妨害を受け、ジルクは負傷してレースを続けられなくなる。

そこでジルクの代役として出場することになるのがリオンだった。

この時点で面白いのは、リオンが単純にジルクを助けたいわけではないこと。

リオンは五人の攻略対象者たちと決闘した直後でもあり、ジルクに対して特別な友情を感じているわけじゃない。

むしろ普段の言動を見れば、かなり嫌っている。

それでも事情が重なり、リオンはジルクの代わりにエアバイクへ乗る。

レースではリオン自身も人気者とは程遠いため、クラリス側とは別の選手からまで敵意を向けられる。

そんな中で最大のライバルになるのが、優勝候補のダンだ。

ダンはクラリスを慕っているため、当初はジルクの代役であるリオンにも厳しい態度を取る。

しかし会話をしてみると、二人には妙な共通点が生まれる。

それが第7話のタイトルにもなっている「同じイケメン嫌い」だ。

リオンが事情を聞くと、ダンはクラリスがなぜそこまでジルクへ怒っているのかを明かす。

急な婚約破棄。

手紙だけで済ませたこと。

本人と会おうともしなかったこと。

そして、そのせいでクラリスが以前とは大きく変わってしまったこと。

ここでリオンは初めて、単なる「嫉妬深い元婚約者の嫌がらせ」ではなく、婚約破棄の後始末をジルクがほとんどしていなかったことを知る。

この情報が、レース後の行動につながるんだ。

リオンは最終的にレースを勝ち抜く。

そしてジルクに対して「代わりに走ってやった大きな貸し」を持つことになる。

普通の主人公なら、ここで報酬や謝礼を求めるところかもしれない。

リオンならなおさら、お金や無茶な要求を口にしても不思議じゃない。

でも彼がジルクへ突きつけた要求は違う。

クラリスのところへ行き、本人にきちんと謝罪しろ。

そこだった。

※画像はAIによるイメージ

この要求によって、クラリスとジルクはようやく直接向き合うことになる。

ここがクラリス編の本当のクライマックスだと僕は思う。

リオンはクラリスに「もう忘れろ」と説教したわけじゃない。

クラリスを力で止めて、「復讐はよくない」で終わらせたわけでもない。

そもそもクラリスが欲しかったのは、ジルクが戻ってくることだけではなかったはずだ。

自分がなぜ捨てられたのか。

それまで積み上げてきた関係は何だったのか。

なぜ直接話してくれなかったのか。

そこに当事者から答えてもらえない限り、クラリスの中では婚約が終わっても「関係」は終わらない。

リオンはそこを動かした。

つまり彼がクラリスへ渡したのは、新しい恋そのものではない。

過去の恋を終わらせるための出口なんだ。

ここを飛ばして「クラリスはジルクに振られた後、リオンを好きになった」とだけ説明すると、クラリスの恋心がかなり軽く見えてしまう。

実際には、リオンが彼女にとって特別になった理由には、かなり具体的な出来事がある。

自分を慰めたからじゃない。

ジルクを奪い返してくれたからでもない。

誰も片づけようとしなかった問題に踏み込み、ジルク本人へ「逃げずに向き合え」と言った。

だからクラリスにとってリオンは、失恋後に現れた次の男性ではなく、止まっていた時間をもう一度動かした人物になるんだ。


クラリスとジルクはなぜうまくいかなかった?

クラリスとジルクについて、「クラリスの愛情が重すぎたから別れた」と整理されることがある。

確かに、クラリスには好きな相手へかなり強い関心を向ける性質がある。

相手の好みや行動をよく見て、必要だと思うものを先回りして用意する。

相手のためだと思えば、かなり積極的に動く。

この愛情表現は、相性がいい相手なら「自分のことを深く理解してくれている」に変わる。

でも距離を必要とする人からすれば、「何でも把握されている」「自分の領域に踏み込まれている」と感じることもある。

ジルクにとっては後者だったと考えると、二人のすれ違いは理解しやすい。

ただし、ここで混ぜてはいけないものが二つある。

  • クラリスとジルクの恋愛的な相性が合わなかったこと
  • ジルクが婚約をどう終わらせたかという問題

この二つは別だ。

クラリスがどれだけ善良でも、ジルクには彼女を好きでい続ける義務はない。

一方で、相性が悪かったからといって、相手と対話せず手紙だけで関係を切ることまで自動的に正当化されるわけでもない。

僕は二人の破局を、「クラリスが重かったから失敗した恋」ではなく、愛情表現の相性が噛み合わなかったうえ、別れ方までまずかった関係と見るのが一番自然だと思っている。

この切り分けをすると、ジルクとリオンの違いも見えてくる。

リオンだって、クラリスの押しの強さを全部歓迎しているわけではない。

困惑するし、逃げ腰になる場面もある。

それでもクラリスの一部分だけを見て、「だからお前は駄目なんだ」と人格全体を否定しない。

レース妨害のような問題行動は問題として扱いながら、その裏に何があったのかを知れば、ジルクへ向き合うよう働きかける。

この距離感がクラリスには大きかったんじゃないかな。

「何をしても許してもらえたから好きになった」のではない。

むしろ逆だ。

間違ったところは間違ったまま、それでも自分が傷ついた理由まで見ようとしてくれた。

クラリスがリオンを特別視する背景には、この経験があると考えられる。


クラリスとリオンの関係は?恩人から本気の恋愛対象へ

ジルクとの関係に区切りをつけた後、クラリスはリオンへ好意を向けるようになる。

しかもクラリスだから、恋心を抱いたところで静かに待ってはいない。

かなり積極的だ。

ここは彼女の性格が最初から一貫している部分でもある。

ジルクを好きだった頃も、自分から相手を理解しようとしていた。

婚約破棄後には、その行動力が怒りへ向かった。

そしてリオンを好きになった後は、今度はリオンとの未来をつかむために使われる。

つまりクラリスは、恋をした途端に別人格へ変わるタイプじゃない。

同じエネルギーの向き先が変わるキャラクターなんだ。

ここでアンジェリカと比べると、さらに分かりやすい。

アンジェリカもクラリスも、高位貴族の令嬢として婚約者を持ち、その相手がマリエへ傾いたことで人生を大きく狂わされた。

ユリウスに婚約を拒まれたアンジェリカ。

ジルクに婚約を破棄されたクラリス。

似た位置に置かれた二人だけれど、傷ついた後の反応は違う。

アンジェリカは、感情を爆発させながらも家の立場や自分の誇りを支点にしようとする。

クラリスは、より直接的に怒りへ飲み込まれ、その感情をジルクへぶつけてしまう。

僕はクラリスを、アンジェリカの単純なライバルではなく、同じような傷を別の方向へこじらせた女性として見ると面白いと思っている。

だから後に二人がリオンを巡る立場になっても、「どちらかを排除すれば勝ち」というだけの恋愛バトルにはならない。

お互い、なぜリオンが特別な存在になったのかを想像できる。

二人とも、自分が最も苦しい状況にいる時にリオンが予定外の形で割り込んできた経験を持つからだ。

ここには『モブせか』らしい皮肉もある。

リオン自身はずっと「モブとして平穏に生きたい」と考えている。

なのに彼がゲームの予定を壊せば壊すほど、本来ならシナリオ上の役割だけで処理されていた女性たちが、一人の人間として彼の人生へ入り込んでくる。

クラリスはその象徴的な一人だ。

ゲーム的に見れば「攻略対象ジルクの婚約者」という一文で済ませられる。

けれど現実になった世界では、そこにも生活があり、感情があり、失恋の後がある。

設定上の脇役にも、その設定からはみ出す人生がある。

クラリスというキャラクターは、その作品テーマをかなり分かりやすく見せてくれるんだ。


クラリスの最後は?書籍版ではリオンの側室になる流れが明示される

ここがこの記事で一番重要な部分だ。

結論から言うと、GCノベルズ書籍版13巻では、クラリスはディアドリー、ヘルトルーデ、ルイーゼと共にリオンとの将来を求め、最終的に側室として迎えられる流れが明示される。

一方、Web版2019年公開の本編エピローグだけでは、クラリスがリオンの妻になったと名指しで確定する描写は確認できない。

この二つを混ぜないことが重要だ。

『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』の書籍版はGCノベルズ全13巻で完結しており、13巻は2024年3月29日発売。公式の商品紹介でも「堂々の完結」と明記されている。

書籍版13巻の終盤では、ヴォルデノワ神聖魔法帝国との決戦にクラリス、ディアドリー、ヘルトルーデ、ルイーゼらも関わっていく。

そこで重要になるのが、彼女たちへの「報酬」だ。

リオンは戦いへ向かう前、彼女たちの協力に対して最大限の報酬を認める趣旨の書面に署名する。

ところが本人は、彼女たちが本当に何を望んでいるのかを十分に理解していない。

リオンらしいと言えば、ものすごくリオンらしい。

国家間の戦争や巨大兵器が相手なら大胆に動く男が、自分へ向けられている恋愛感情になると途端に察しが悪くなる。

そして戦争後。

リオンが国王の立場になったところで、クラリスたちはその書面を持ち出す。

彼女たちが求める「報酬」は財産や爵位ではなく、リオンとの関係だった。

書籍版13巻では、この契約がクラリス、ディアドリー、ヘルトルーデ、ルイーゼを側室へ迎える展開につながっている。最終巻の内容を追った記録でも、戦前にリオンが署名した「最大限の報酬」の約束が、四人の側室入りへ結びつく展開として整理されている。

※画像はAIによるイメージ

ここで現在の記事で特に整理しておきたいのが、Web版との違いだ。

「小説家になろう」に掲載されているWeb版は現在177エピソード構成になっているが、これは2019年10月15日公開の本編「エピローグ」の後に、2024年4月19日付で「書籍版乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 完結記念SS」が追加されたためだ。作品ページにも全177エピソード、最終掲載日2024年4月19日と表示されている。

そしてWeb版本編の第176話「エピローグ」では、戦争後の未来が描かれる。

リビアが子供たちへリオンの物語を読み聞かせており、リオンが国王になったこと、アンジェが王国運営を実質的に取り仕切っていること、リオンが次の乙女ゲームの危機へ対処するため外国の学園へ教師として潜入していることなどが分かる。

しかし、このWeb版本編エピローグの中で「クラリスがリオンの妻になった」とクラリスの名前を挙げて明示する部分はない。

ここはかなり大事だ。

ネット上では書籍版13巻の展開とWeb版終盤がまとめて語られ、「Web版でもクラリスが側室になった」と説明されることがある。

ただ、少なくとも公開されているWeb版エピローグそのものを基準にすると、その断定は慎重にした方がいい。

クラリスの最終的な恋愛上の決着を明確に知りたいなら、答えがはっきり描かれるのは書籍版13巻と整理するのが安全だ。

そしてこの変更は、キャラクターの結末としてかなり意味がある。

クラリスは序盤、ジルクに関係を終わらせられた側だった。

自分では未来を選べないまま、相手の判断によって予定していた人生を失った。

ところが書籍版終盤では逆になる。

今度は自分から未来を要求する。

リオンが何となく決めてくれるまで待たない。

自分が何を望んでいるのかを示し、同じ立場の女性たちと手を組み、約束まで使って前へ進む。

かなり強引ではある。

でもクラリスという人物として見ると、ものすごく一貫しているんだ。

彼女は最初から、待っているだけの女性じゃない。

好きな相手のために動く。

問題があれば動く。

欲しいものがあれば動く。

その行動力が序盤では復讐へ向かい、最後には自分が望む人生を選び取る方向へ向かう。

この違いこそが、クラリスの成長だと思う。


考察|クラリスは「一途さ」を捨てずに成長したキャラクター

クラリスについて僕が一番面白いと思うのは、物語が彼女の欠点を丸ごと消して「いい子」に修正しなかったことだ。

クラリスは最後まで重い。

最後まで押しが強い。

そして最後まで、好きになったリオンを簡単には諦めない。

だから彼女の成長を「ジルクへの執着を捨て、穏やかな女性になった」と説明すると少し違う。

変わったのは、一途さそのものじゃない。

一途さをどう使うかなんだ。

ジルクの婚約者だった頃、クラリスは相手をよく見る女性だった。

相手の嗜好や行動を知り、喜ばせようとする。

それは愛情深さとして働く一方、ジルクには重荷として受け取られる。

婚約を破棄されると、その強烈な集中力が今度は怒りへ反転する。

ジルクを忘れられず、相手へ感情をぶつける。

エアバイクレースでの妨害まで進んだのは、その最も悪い形だ。

でもリオンとの関係では、その性質がまた違う顔を見せる。

簡単には諦めない。

相手の置かれた状況を見る。

機会が来るまで待てる。

ここぞという場面では自分から動く。

そして書籍版最終巻では、同じ思いを持つ女性たちと協力し、自分が望む未来を具体的な行動で取りにいく。

欠点と長所は別々の場所にあるわけじゃない。

同じ根から生えている。

これはキャラクター造形としてかなりリアルだと思う。

慎重さは、ある場面では思慮深さになる。

別の場面では優柔不断になる。

強気さは、危機では決断力になる。

人間関係では威圧的に見えることもある。

クラリスも同じだ。

好きな人を強く想う性格が問題なのではない。

その感情に支配され、相手を傷つける方向へ進めば欠点になる。

反対に、自分の人生を選ぶ力へ変えられれば長所になる。

だから僕は、クラリスの成長を「一途さを捨てたこと」ではなく「一途さの扱い方を覚えたこと」だと考えている。

この視点で見ると、エアバイクレースと書籍版13巻の結末が綺麗につながる。

序盤のクラリスは、ジルクの選択に人生を振り回されている。

婚約を終わらせるのもジルク。

直接話すかどうかを決めるのもジルク。

クラリスはその結果に怒り、自分を制御できなくなる。

ところが終盤では、自分がどう生きたいかを相手任せにしない。

リオンとの未来を欲しいなら、その意思を示す。

この構造はかなり対照的だ。

「選ばれなかった女性」から「自分で選ぶ女性」へ変わった。

僕はこれが、クラリスというキャラクターを一文で表すなら一番しっくりくる。

そしてもう一つ注目したいのが、ジルクとリオンの対比だ。

ジルクとの恋でクラリスが最も苦しんだのは、自分の気持ちが強かったことだけじゃない。

相手との対話が途切れたことだ。

一方、リオンは恋愛的には鈍感で、クラリスの積極性から逃げ腰になることもある。

それでも物語の最初の接点で、彼はクラリスの問題から完全には逃げなかった。

むしろ逃げていたジルクを彼女の前へ連れ戻した。

この違いは象徴的だと思う。

クラリスにとってリオンは、「何でも自分の望み通りにしてくれる男性」だから特別なのではない。

自分でも整理できなかった過去へ区切りをつける場を作った人物だから特別なんだ。

だから恋の始まりにちゃんと因果がある。

ここがクラリスの恋愛を単なるハーレム要員以上のものにしている。

もう一つ、『モブせか』全体の構造から見るとクラリスは非常に面白い。

彼女は乙女ゲーム的な立場だけで言えば、「攻略対象の婚約者」でしかない。

ゲームなら主人公と攻略対象の恋を成立させるため、邪魔な婚約者として処理されてもおかしくない。

でもこの世界は、リオンやマリエがシナリオを壊したことで予定された役割から外れていく。

その瞬間、背景キャラクターにも「その後」が生まれる。

婚約者を奪われて終わりではない。

失恋した後も人生は続く。

怒ることもある。

失敗することもある。

別の相手を好きになることもある。

そして最後には、かつてゲーム上では脇役だった女性が、世界の中心人物になったリオンへ自分から手を伸ばす。

こう考えるとクラリスは、タイトルにある「モブ」という言葉の裏側を体現する存在でもある。

物語の都合では一行で処理できる人間にも、本人から見れば一生分の人生がある。

『モブせか』の面白さはリオンの下克上だけじゃない。

彼がシナリオを破壊したことで、本来なら物語の外へ追いやられていた人々の人生まで動き始めることにもある。

クラリスは、その変化が非常に分かりやすく現れたキャラクターだと思う。


まとめ|クラリスはジルクに捨てられた令嬢ではなく、自分で未来を選び直した女性

『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』のクラリス・フィア・アトリーは、アトリー伯爵家の令嬢であり、ジルクの元婚約者だ。

ジルクから婚約を破棄され、しかも十分に向き合ってもらえないまま関係を終わらされたことで、クラリスは強い怒りを抱えるようになる。

TVアニメ第7話「同じイケメン嫌い」では、その怒りがエアバイクレースでの妨害へ発展し、ジルクが負傷。代役としてリオンが出場する。

そこでダンから婚約破棄の事情を知ったリオンは、レース後に得た「ジルクへの貸し」を使い、彼へクラリスと直接会って謝罪するよう求めた。

この出来事によって、クラリスはジルクとの関係へようやく区切りをつけられる。

そして、自分の過去を終わらせるきっかけをくれたリオンへ好意を向けるようになる。

書籍版ではその気持ちを最後まで諦めない。

GCノベルズ最終13巻では、クラリスはディアドリー、ヘルトルーデ、ルイーゼと共に、戦前にリオンが交わした「最大限の報酬」の約束を使い、リオンとの将来を求める。

その結果、クラリスたちを側室として迎える展開へ進む。

一方、2019年公開のWeb版本編エピローグでは、リオンが国王となった未来や子供たちの存在は描かれているものの、クラリスを名指しして妻になったと断定する描写は確認できない。

だから「クラリスの最後」を調べるなら、Web版と書籍版を混同せず、明確な恋愛上の決着は書籍版13巻にあると覚えておくと分かりやすい。

そして彼女の魅力は、最後にリオンと関係を持てたことだけじゃない。

好きな人を強く想う。

よく観察する。

自分から動く。

簡単には諦めない。

クラリスはその性格を最後まで捨てなかった。

変わったのは、その力を復讐へ使うのか、自分の未来を選ぶために使うのかだ。

ジルクとの婚約破棄直後、クラリスは「相手に人生を決められた女性」だった。

書籍版の最後では、「自分が欲しい人生を自分から取りに行く女性」になっている。

クラリスの物語は、失恋して次の男性を好きになるだけの話ではない。選ばれなかった痛みから立ち直り、自分で次の未来を選び直す物語なんだ。

そこまで追って初めて、エアバイクレースで怒りに震えていたクラリスと、終盤までリオンを諦めなかったクラリスが、一本の人物像としてつながって見えてくると思う。


よくある質問

クラリス・フィア・アトリーとは誰?

クラリスはアトリー伯爵家の令嬢で、ジルク・フィア・マーモリアの元婚約者。TVアニメでは第7話「同じイケメン嫌い」で本格的に登場し、鈴代紗弓が声を担当している。

ジルクから婚約を破棄された後に荒れてしまうが、リオンがジルクとの対話へつなげたことで過去に区切りをつけ、その後はリオンへ好意を向けるようになる。

クラリスはなぜリオンを好きになった?

大きな転機は、リオンがジルクとの婚約破棄問題へ介入したことだ。

リオンはエアバイクレースでジルクの代役を務めた後、その「貸し」を利用して、ジルク本人へクラリスと会って謝罪するよう求めた。クラリスにとってリオンは、終わらせられなかった過去へ区切りをつけるきっかけを作った人物だったと考えられる。

クラリスは最後にリオンと結ばれる?

書籍版では、クラリスはリオンの側室となる流れが描かれる。

GCノベルズ最終13巻で、クラリス、ディアドリー、ヘルトルーデ、ルイーゼは戦前にリオンが署名した報酬の約束を根拠に、彼との関係を求める。

ただしWeb版本編の2019年公開エピローグでは、クラリスが妻になったことは名指しで明示されていない。ネット上では両媒体の情報が混ざりやすいため、「クラリスの明確な最終処理は書籍版13巻」と分けて理解するのがおすすめだ。

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