『いびってこない義母と義姉』のキャラデザ担当は佐々木睦美さん。公式ではキャラクターデザイン、関係会社の作品情報では総作画監督も兼任すると確認できる。
アニメ版の見どころは、てるの「怖そうなのに優しい」を筆頭に、第一印象と本当の性格のギャップを、顔・髪型・衣装・シルエット・表情の芝居まで使って見せていることだ。
『いびってこない義母と義姉』キャラデザ担当は誰?佐々木睦美が担当
結論から整理すると、TVアニメ『いびってこない義母と義姉』でキャラクターデザインを担当しているのは佐々木睦美さんだ。
アニメ公式サイトのスタッフ欄では「キャラクターデザイン:佐々木睦美」と掲載されている。一方、本作の製作委員会に参加している株式会社フラッグの作品情報では、担当が「キャラクターデザイン/総作画監督」と記載されている。
検索してきた人向けに、まずキャラクター表現と関係の深いスタッフだけを整理しておこう。
担当 スタッフ
キャラクターデザイン/総作画監督 佐々木睦美
サブキャラクターデザイン 三好裕理(チップチューン)
メインアニメーター 寒川顕一
監督 井上圭介
シリーズ構成 星野七海
美術監督 中原英統
色彩設計 重冨英里
撮影監督 新谷優子
アニメーション制作 NEWON
つまり、「キャラデザ担当は誰?」への最短回答は佐々木睦美さん。
ただしアニメ本編のキャラクタービジュアルは、佐々木さん一人の仕事だけで完成するわけではない。サブキャラクターデザイン、作画、色彩、美術、撮影など複数の工程が重なり、実際に僕らが見る人物の印象が作られている。
原作はおつじさんによる漫画『いびってこない義母と義姉』で、「comic POOL」掲載作品。一迅社からコミックスが刊行され、2026年8月25日には第10巻が発売された。
TVアニメ化は2025年7月22日に発表され、アニメは2026年7月8日からtvkテレビ神奈川、テレ玉、チバテレなどで放送を開始している。
ここで押さえておきたいのが、本作におけるキャラデザの重要度だ。
『いびってこない義母と義姉』は、大規模なバトルや派手な必殺技を中心に見せる作品ではない。
誰がどんな顔で相手を見るか。
一歩近づくのか、引くのか。
平然としているのか、慌てるのか。
そうした人物の表情と立ち姿そのものが、コメディと家族ドラマを動かしている。
だから「原作絵に似ているか」だけで終わらせると、アニメ版キャラデザの面白さをかなり取りこぼしてしまう。
僕が注目したいのは、佐々木睦美さんが基本デザインを担当したキャラクターたちが、結果として「最初にどう見えるか」と「知った後にどう見えるか」の両方を成立させていることだ。
これは制作陣がその意図を明言した、という話ではない。
あくまで映像と公式のキャラクター設定を照らし合わせた筆者の見方だけど、本作の物語構造とは非常に相性のいいキャラクターデザインになっていると感じる。
その代表が、義母の鴻蔵てるだ。
アニメ版キャラデザの特徴は?てるの「怖そうなのに優しい」が象徴的
『いびってこない義母と義姉』のキャラデザを見るなら、まず鴻蔵てるの第一印象と内面の落差を見るのが分かりやすい。
公式の人物紹介で、てるは鴻蔵家の正妻で美冶の義母。長身で鋭い眼光を持つ厳格な佇まいから周囲に恐れられがちな一方、内面は愛情深く、お茶目で、美冶や娘たちを温かく見守る人物とされている。
ここがまさに本作のタイトルそのものなんだよね。
主人公の美冶は母を亡くし、名家である鴻蔵家の本家へ引き取られる。
妾の子であることに負い目を感じている美冶は、本妻であるてるや義姉のまりか、ありさから歓迎されるとは考えていない。
第1話では、どんな仕打ちにも耐えようと覚悟し、鴻蔵家で土下座までして挨拶する。
ところが待っていたのは、予想していた「いびり」とは正反対だった。
義姉たちは美冶を風呂へ入れ、服を用意し、さらに父の書斎を美冶の部屋にしようと大掃除まで始める。
この第1話だけで、本作の基本構造はほぼ見える。
美冶が怖がる。実際には優しい。そのズレが笑いと温かさになる。
だから、てるのビジュアルも最初から「どこから見ても優しそう」では成立しにくい。
美冶だけでなく周囲の人物まで少し身構えてしまうくらいの威厳があったほうが、物語の前提に説得力が生まれる。
一方で、本当に冷酷な人物にしか見えない造形でも困る。
家族との日常へ入った瞬間に、人物の印象が作品から浮いてしまうからだ。
そのギリギリのところに、てるがいるように僕には見える。
長身。
鋭い目。
引き締まった表情。
堂々とした立ち姿。
こうした要素は「厳しい人かもしれない」という第一印象を作りやすい。
でも会話やリアクションを見ていくと、その印象が少しずつ変わる。
これは設定画そのものが途中で変わるという意味じゃない。
同じ顔と同じ体格なのに、芝居を通すことで別の人物のように感じられるということだ。
その特徴が特に分かりやすい例として、第7話「鴻蔵の財宝」も面白い。
この回では、まりか・ありさの従姉妹である弥栄子がてるにぶつかってしまい、本家本妻であるてるの風貌もあって内心縮み上がる。
つまり、美冶だけが勝手にてるを怖がっていたわけではない。
作中世界でも、てるの外見や立場から「怖い人」という第一印象が成立しているんだ。
でも視聴者は、それまでのエピソードを通じててるの人柄をかなり知っている。
ここで面白い逆転が起きる。
弥栄子側から見れば「恐ろしいてる」。
視聴者側から見れば「本当は愛情深いてる」。
同じ人物を見ているのに、知っている情報量によって見え方が違う。
これこそ、キャラクターデザインと物語が噛み合った瞬間だと僕は思う。
てるの顔自体が「怖い顔」から「優しい顔」へ交換される必要はない。
視聴者の側に人物への理解が蓄積されることで、同じ鋭い眼光さえ以前とは違って見える。
僕はこれを、キャラデザが物語を説明しているというより、物語が進むほどキャラデザの意味まで変わって見える設計として捉えている。
最初から正解を全部見せない。
まず外見から印象を持たせる。
その後、本人の行動を見せる。
そして「思っていた人と違った」と視聴者の認識を更新させる。
『いびってこない義母と義姉』では、この流れが笑いにも、安心感にも、キャラクターへの愛着にもつながっている。
美冶・まりか・ありさのキャラデザはどう違う?髪型と衣装で性格まで見分けやすい
てるだけでなく、美冶・まりか・ありさを並べると、アニメ版キャラデザのもう一つの強みが見えてくる。
それは、性格の違いが全身のシルエットから伝わりやすいことだ。
まず主人公の鴻蔵美冶。
公式では、鴻蔵家へ引き取られた控えめで心優しい少女として紹介されている。妾の子である負い目から当初はいびられることを覚悟するものの、義母や義姉の愛情を受け、少しずつ家族との絆を深めていく。
声を担当するのは鈴木日菜さんだ。
美冶は、周囲をぐいぐい引っ張るタイプの主人公ではない。
むしろ序盤は、周囲の言葉や行動を受け止め、驚き、戸惑い、「そんなによくしてもらっていいの?」と反応する側にいる。
だから本作では、美冶の受けの表情がものすごく大事になる。
てるが何かする。
まりかが動く。
ありさが一言加える。
そこで美冶の想像と現実がズレ、その反応がオチになる。
美冶を必要以上に派手なデザインへ寄せないことが、結果として周囲の濃いキャラクターを受け止める主人公像とよく噛み合っているように見える。
対して長女の鴻蔵まりかは、かなり分かりやすい。
公式設定では短髪に大きなリボン、洋装が特徴。天真爛漫で勝気、少し喧嘩っ早いところもあり、妹のありさと張り合いながら、美冶を溺愛している。
CVは芹澤優さん。
短い髪と大きなリボンは、一枚絵でもかなり識別しやすい。
しかも、まりかは性格的にも外へ感情を出す人物だから、リアクションが大きくなった時にこのシルエットが映える。
「短髪だから活発にデザインした」という制作意図が公表されているわけではない。
ただ映像として見ると、まりかの快活な芝居と軽快な外見が相互に印象を強めているとは感じる。
次女の鴻蔵ありさは対照的だ。
公式設定では長髪に後頭部のリボン、和装が特徴。母譲りのクールな性格で、姉のまりかをからかうことを楽しみ、家業も手伝う才女とされている。
一方で、打たれ弱い一面も持っている。
CVは貫井柚佳さんだ。
まりかが「前へ出る」印象なら、ありさは一歩引いて状況を見ているような印象を作りやすい。
洋装と和装。
短髪と長髪。
快活と冷静。
この対比が明快だから、姉妹が同じ画面で動いていても混同しにくい。
ここはTVアニメでは地味だけど重要だ。
漫画なら気になるコマを止めて確認できる。
でもアニメではカットが流れ、人物がしゃべりながら動き、位置も変わる。
そんな時、髪型・衣装・全身の輪郭が明確に違えば、視聴者は人物を一瞬で判別できる。
僕はこれを「性格をシルエットへ翻訳する」ような作業だと思っている。
まりかは快活。
ありさはクール。
美冶は控えめ。
てるは威厳がある。
まず分かりやすい入口があるからこそ、その人物が普段と違う反応を見せた時にギャップが生まれる。
第3話「名家の娘たち」では、勉強に悩む美冶へまりかが自身の過去を話す。
勝気で前向きな人物として見えていたまりかにも、それだけでは説明できない時間や感情があると分かる場面だ。
第4話「美冶の恩返し」では逆に、美冶が恩返しをしようとしてまりかたちの誘いを断ったため、義姉たちが「避けられているのでは」と勘違いしてしまう。
序盤は美冶が家族の気持ちを誤解していた。
ところが家族になってくると、今度はまりかたちのほうが美冶を誤解する。
この時に効くのが、普段のキャラクター像なんだ。
いつも自信満々な人物が弱気になる。
普段は冷静な人物が動揺する。
怖そうな人物が優しい表情を見せる。
基本のデザインと性格が分かりやすいほど、そこから外れた瞬間が大きく見える。
僕は『いびってこない義母と義姉』のキャラデザで、決め顔以上にこの「崩れた瞬間」を見てほしい。
キャラクターの魅力って、いつも設定通りの顔をしている時だけに出るものじゃないからね。
佐々木睦美の総作画監督とは?サブキャラデザや作画チームも重要
『いびってこない義母と義姉』の公式サイトでは佐々木睦美さんを「キャラクターデザイン」と掲載し、株式会社フラッグの作品情報では「キャラクターデザイン/総作画監督」と記載している。
ここは「どちらが正しいの?」と迷う必要はない。
掲載しているスタッフ情報の詳しさが違うと考えると分かりやすい。
キャラクターデザインは、その作品に登場する人物をアニメとして描く際の基本的な外見を作る重要な仕事だ。
ただしTVシリーズの本編すべてをキャラクターデザイナー一人が描くわけではない。
大量のカットを複数のアニメーターが分担する以上、描き手による差はどうしても出る。
目や輪郭。
髪のボリューム。
身体のバランス。
表情の癖。
そこで作画監督や総作画監督などが、シリーズ全体のキャラクター表現を支えていく。
本作ではさらに、サブキャラクターデザインを三好裕理さん(チップチューン)、メインアニメーターを寒川顕一さんが担当している。
つまり視聴者が画面で見る人物は、佐々木睦美さんの基本デザインを出発点に、複数のスタッフによって「動くキャラクター」へ変換されているわけだ。
そして『いびってこない義母と義姉』では、この「動く」がかなり重要だと思う。
てるの設定画がどれだけ魅力的でも、それだけでは「優しさ」は完結しない。
美冶を見守る視線。
家族へ反応する間。
意外なことで動揺した時の表情。
そうした芝居が加わって初めて、怖そうな外見と愛情深い内面が一人の人物としてつながる。
まりかも同じ。
設定上は勝気でも、美冶のことで不安になれば弱い表情をする。
ありさもクールなだけでなく、打たれ弱い一面がある。
美冶も控えめだからといって、ずっと縮こまっているだけの人物ではない。
キャラクターらしさを守りながら、どこまで別の表情を見せられるか。
日常コメディでは、ここが作画の面白いところなんだ。
さらに実際の画面では、色彩設計の重冨英里さん、美術監督の中原英統さん、撮影監督の新谷優子さんらの仕事も人物の印象へ関わってくる。
同じ表情でも、強い影が落ちれば緊張して見える。
柔らかな光の中なら安心感が出る。
衣装の色や背景との組み合わせによっても、華やかさ、格式、落ち着きは変わる。
だから「キャラデザ」という言葉を、線画だけの仕事として見るのは少しもったいない。
視聴者が最終的に受け取るキャラクタービジュアルは、線・色・光・背景・芝居が合流したものだからだ。
もちろん、そのすべてをキャラクターデザイナー本人の功績として扱うのも正確ではない。
佐々木睦美さんが基本となる人物デザインを担当し、そこから各セクションがアニメ映像として仕上げていく。
この役割分担を知っておくと、「キャラデザがいい」という感想も一段具体的になる。
「顔がかわいい」だけではなく、「この人物らしさが動いても保たれている」「普段と違う顔をした時も本人に見える」といったところまで楽しめるからね。
学園編でキャラデザはどう広がる?リル・小雪・御厨定は入口が違う
物語が叡報女学園へ広がると、キャラクターデザインには別の面白さが出てくる。
結論を言うと、名家の令嬢が増えても、一人ひとりの第一印象を分けながら、その印象だけでは終わらせない構成になっている。
ここは前の記事では人物を細かく紹介しすぎていたので、キャラデザを見るうえで代表的な3人に絞ろう。
まず花山リル。
リルは華道家元・花山家の令嬢で、自身も華道の道を究め、国内外で活躍する才女。公式では「気高く華やかで常に注目の的」と紹介されている。
CVは大地葉さんだ。
第5話「初めての友達」で、美冶は叡報女学園へ入学する。
そこで同じクラスの注目人物であるリルから目をつけられたと思い、「何か不快なことをしたのでは」と不安になる。
ところが、その後の関係は美冶が想像した通りには進まない。
公式の人物紹介でも、リルは美冶の内面の美しさに触れ、友達になる人物とされている。
つまりリルにも、近寄りがたいほど華やかな第一印象と、実際に関わってから見えてくる人柄がある。
次が稲荷小雪。
小雪は社会のさまざまな情報を把握する稲荷家の長女だが、その情報量ゆえにうまく会話ができず、人付き合いを苦手としている。
CVは寺澤百花さん。
第6話「稲荷家のご息女」では、学園の活気あふれる令嬢たちと少し違う、物静かな小雪に美冶が親近感を覚える。
リルが「目に入った瞬間から華やかな人物」なら、小雪は「関わることで少しずつ魅力が分かる人物」。
同じ令嬢という大きなカテゴリーに入っていても、キャラクターの入口が違う。
そして御厨定。
定は叡報女学園の生徒会長で、規律を重視する厳格な人物。
第9話「規律と伝統の生徒会」では、生徒から大きな支持を得る生徒会長として登場する一方、美冶は以前公園で出会った人物と定の面影を重ねる。
CVは七海ひろきさんだ。
ここでも「生徒会長」「規律」「厳格」という分かりやすいラベルだけでは人物が完結しない。
さらに第10話「乙女たちの戦」では体育祭が描かれ、定とまりかが短距離走で対決し、小雪や美冶たちも同じイベントの中で動く。
このように複数の主要キャラクターが一つの場面へ集まるほど、シルエットの見分けやすさは重要になる。
僕が面白いと思うのは、学園編で人物が増えても、全員を単純に派手にして差別化しているわけではないことだ。
華やかなリル。
物静かな小雪。
厳格な定。
それぞれにまず一つ、視聴者がつかみやすい入口がある。
でも物語を見ていくと、その一言だけでは人物を説明できなくなる。
この構造は、鴻蔵家のキャラクターと同じなんだよね。
怖そうな義母。
勝気な姉。
クールな妹。
控えめな美冶。
最初は簡単な言葉で説明できる。
でも知っていけば、必ずそこからはみ出す部分が出てくる。
だから学園編で増えているのは「キャラクターの人数」だけじゃない。
第一印象から人物を知り直すパターンそのものが、家族の外へ広がっている。
この部分はキャラクターデザイン単独の意図と断言できるものではないけれど、脚本と映像を合わせて見ると、本作の統一感につながっていると僕は感じる。
考察|『いびってこない義母と義姉』のキャラデザは「第一印象を更新する物語」と相性がいい
ここからは公式情報そのものではなく、アニメ批評・脚本研究の視点からの僕なりの分析だ。
僕が『いびってこない義母と義姉』のキャラデザを面白いと感じる最大の理由は、キャラクターの外見を覚えることと、その人物を理解することが別々の段階になっている点にある。
美冶は鴻蔵家へ来た時、家族の本心を知らない。
知っているのは、自分が妾の子であること、本妻とその娘たちのいる家へ入ること、そして目の前に威厳のあるてるがいることだ。
材料が少ないから、最悪の展開を想像する。
視聴者側も同じだ。
「義母」「義姉」「妾の子」「名家」という設定を聞けば、過去に見てきたドラマや漫画のパターンから、険悪な家族関係を想像しやすい。
作品はそこを逆手に取る。
いびると思ったら、いびらない。
拒絶すると思ったら、歓迎する。
怖いと思ったら、優しい。
つまり第1話の時点から、美冶の先入観だけでなく、視聴者が物語ジャンルから持ち込む先入観までひっくり返しているんだ。
そこで、てるのようなキャラクターデザインが生きる。
もし初登場から、誰が見ても柔らかく穏やかな人物にしか見えなかったら、「この人にいびられる」と覚悟する美冶との温度差が大きすぎる。
逆に、本当に悪役にしか見えないほど冷酷なデザインなら、その後の日常コメディとの接続が難しくなる。
現在のてるは、その中間にいるように僕には見える。
「確かに怖く感じてもおかしくない」。
でも、「怖い人だ」とまでは断定できない。
だから行動を知る余地が残る。
僕はこの関係を、「キャラデザが入口で、物語が答え合わせをする」と考えている。
ただし、答え合わせをしたら外見の意味が消えるわけじゃない。
ここが重要だ。
第1話で見たてるの鋭い眼光と、第7話まで人物像を知った後に見る同じ眼光では、視聴者側の受け取り方が変わる。
最初は「怒られるかもしれない」。
後になると「また誤解されてるな」と笑えるかもしれない。
画面に描かれているパーツが大きく変わらなくても、物語によって意味が変わる。
これは長期的にキャラクターを見るTVシリーズと相性がいい。
そして、この構造は美冶自身にも返ってくる。
第9話では、生徒会で美冶の入学をめぐる問題が議題になる。
そこで問われているのは、美冶が実際にどんな人物なのかだけではなく、「妾の子が入学した」という外側の属性だ。
序盤では美冶が「本妻」「義母」「義姉」といった立場から相手を怖がっていた。
ところが学園編では、美冶自身が出生というラベルから判断される側になる。
この反転はかなり面白い。
美冶を実際に知っている家族や友人からすれば、彼女は「妾の子」という一言だけでは説明できない。
控えめだけれど、人を思いやる。
自信はないけれど、一生懸命に応えようとする。
周囲から愛情をもらうだけでなく、恩返しをしたいと行動する。
それを知っている人と、肩書だけを知っている人では、美冶の見え方が違う。
つまり本作では、「見た目や立場から抱いた印象」と「本人を知ってから得る理解」の距離が、家族だけでなく学校という社会へ広がっている。
ここまで来ると、『いびってこない義母と義姉』は単に「怖そうな義母が実は優しかった」という一発ネタでは終わらない。
むしろ、人を一つのラベルだけで理解したつもりになる危うさを、ハートフルコメディの形で何度も見せているように感じる。
キャラクターデザインは、そのテーマを直接説明するものではない。
でも人物ごとに分かりやすい第一印象があるからこそ、その印象を後から更新する快感が生まれる。
これはファンマーケティングの視点でも強い。
一目で特徴が分かるキャラクターは覚えやすい。
短髪と大きなリボンのまりか。
長髪と和装のありさ。
威厳のあるてる。
華やかなリル。
厳格な生徒会長の定。
キービジュアルや短い映像でも、「この人はこういうタイプかな」という入口を作りやすい。
ただし、入口だけで全部説明できてしまうと、物語を見続ける理由は弱くなる。
だから二段目がある。
怖そうなのに愛情深い。
勝気だけれど不安にもなる。
クールなのに打たれ弱い。
華やかだけれど、外見だけでは分からない相手の内面を見る。
情報に詳しいのに、人と話すのは苦手。
一目で分かるフックと、一目では分からない人間らしさ。
この二段構えが、『いびってこない義母と義姉』のキャラクターを覚えやすくしつつ、「もう少しこの人を見ていたい」という感情につながっているんじゃないかな。
そしてアニメで僕が今後も注目したいのは、設定画そのものより人物同士が同じ画面に入った時の芝居だ。
キャラクターデザインは、一人ずつ切り抜いて見るだけでは分からないことがある。
てるの横に美冶が立つ。
まりかとありさが並ぶ。
リルと小雪が同じ教室にいる。
定とまりかが体育祭で競う。
そうすると身長差、姿勢、視線、リアクションの大きさまで含めて、それぞれの人物像が見えてくる。
特に本作は、会話と日常の芝居で関係性を見せる作品だ。
派手なエフェクトがなくてもいい。
いつもより眉が少し下がる。
視線が柔らかくなる。
普段より一歩だけ近くへ寄る。
勝気な人物が言葉に詰まる。
それだけで感情は伝わる。
個人的には、そういう小さな変化を大きな感情へ変えられることこそ、『いびってこない義母と義姉』という作品でキャラクターデザインと作画を見る面白さだと思っている。
佐々木睦美さんの基本デザインを軸に、三好裕理さん、寒川顕一さんらを含む制作チームが、それぞれの人物の「いつもの顔」と「いつもと違う顔」をどう描き分けていくのか。
そこに注目すると、アニメ本編の見え方はかなり変わるはずだ。
まとめ
『いびってこない義母と義姉』のTVアニメ版で、キャラクターデザインを担当しているのは佐々木睦美さんだ。
アニメ公式サイトでは「キャラクターデザイン」、株式会社フラッグの作品情報では「キャラクターデザイン/総作画監督」と掲載されている。
サブキャラクターデザインは三好裕理さん(チップチューン)、メインアニメーターは寒川顕一さん。監督は井上圭介さん、シリーズ構成は星野七海さん、アニメーション制作はNEWONが担当している。
キャラデザの特徴を見るなら、まず義母・てるに注目すると分かりやすい。
長身と鋭い眼光で厳格に見える一方、実際は愛情深くお茶目。
そして、まりかは短髪・大きなリボン・洋装、ありさは長髪・後頭部のリボン・和装と、姉妹でもシルエットが明確に分かれている。
学園編では花山リル、稲荷小雪、御厨定らが加わり、「名家の令嬢」という共通項がありながら、それぞれ別の第一印象を持つ人物として見分けやすくなっている。
ただし、ここからは筆者の解釈だけど、本作のキャラデザが本当に面白いのは第一印象を固定するためではなく、その印象が物語によって変わっていく余地があることだと思う。
怖そうなのに優しい。
勝気なのに弱気になる。
クールなのに打たれ弱い。
華やかでも、肩書だけでは本当の人物像は分からない。
最初は美冶が周囲を肩書や外見から誤解し、物語が進むと今度は美冶自身が出生という属性から判断される。
その反転まで見ると、『いびってこない義母と義姉』のキャラクタービジュアルと物語構造がきれいにつながってくる。
キャラデザが気になっているなら、顔だけを見るのはもったいない。
髪型、衣装、全身のシルエット、立ち姿、表情の振れ幅、そして他の人物と並んだ時の距離感。
そこまで追うと、佐々木睦美さんのキャラクターデザインを出発点に、作画・色彩・美術・撮影まで含めて作られている「動くキャラクター」の魅力が、もっと見えてくるよ。
よくある質問
『いびってこない義母と義姉』のキャラデザ担当は誰?
TVアニメ版のキャラクターデザインは佐々木睦美さんが担当している。
アニメ公式サイトでは「キャラクターデザイン」、株式会社フラッグの作品情報では「キャラクターデザイン/総作画監督」と掲載されている。
サブキャラクターデザインとメインアニメーターは誰?
サブキャラクターデザインは三好裕理さん(チップチューン)、メインアニメーターは寒川顕一さん。
アニメーション制作はNEWONで、色彩設計は重冨英里さん、美術監督は中原英統さん、撮影監督は新谷優子さんが担当している。
アニメ版キャラデザはどこに注目すると面白い?
一番分かりやすいのは、第一印象と実際の性格がどう変わって見えるかだ。
てるの「怖そうなのに愛情深い」、まりかとありさの髪型・衣装・性格の対比、美冶の受けの表情、学園キャラのシルエット差に加え、普段とは違う表情を見せた瞬間まで追うと、本作ならではのキャラクター表現を楽しみやすい。
執筆:神崎 悠真(アニメ批評家|脚本研究家|ファンマーケター)



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