『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは、2.0版と1995年版を一本ずつ収録し、新旧を直接比較できる初回限定生産BOXだ。
2008年12月19日に発売され、本編2作品だけでなく、メイキングを収めた特典Blu-ray Disc、新録オーディオCD、特製ブックレットまで同梱された。単なる「旧作の高画質版」ではなく、押井守監督が13年後に同じ映画をどう再構築したのかまで追える商品になっている。
『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXとは?発売日・品番・収録内容を整理
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは、2008年版「2.0」と1995年公開のオリジナル版をセットにした初回限定生産商品だ。
バンダイビジュアルが2008年8月4日に発表した商品資料では、発売日は2008年12月19日、規格品番は「BCXA-0101」、発売時価格は13,440円(税込)と案内されている。
まず、重要な仕様をまとめておこう。
項目 内容
商品名 GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0 Blu-ray BOX
発売日 2008年12月19日
仕様 初回限定生産
規格品番 BCXA-0101
発売時価格 13,440円(税込)
2.0版本編 約84〜85分
1995年版本編 約84分
特典映像 約42分のメイキングなど
Blu-ray構成 本編BD×2+特典BD×1
そのほか 新録オーディオCD、特製ブックレット
2.0版映像 1080p/MPEG-4 AVC
2.0版主音声 Dolby TrueHD 6.1ch、一部リニアPCMステレオ
監督 押井守
原作 士郎正宗
脚本 伊藤和典
音楽 川井憲次
ここで、旧記事からひとつ精度を上げておきたい点がある。
収録時間については商品データベースによって「214分」とする表記も見られるが、発売当時のAV Watchによる商品案内ではBOXの総収録時間は約230分、実機レビューでは本編約84分×2と特典約42分と整理されている。つまり、データベース上では集計方法によって数字に差が出ているため、「絶対に214分」「絶対に230分」と一方だけを断定するより、個々の本編・特典時間を見たほうが実態をつかみやすい。
価格にも似た注意点がある。
2008年の発売時資料では13,440円(税込)だが、現在閲覧できる一部の販売データベースではメーカー希望小売価格を14,080円(税込)と表示している例がある。
だから中古相場を調べていて「定価は13,440円なのか14,080円なのか?」と迷ったら、発売当時の公表価格は13,440円、現在の商品データベースでは異なる税込表示が残っている場合があると分けて考えるのが安全だ。
そして、このBOXで最も大事なのは価格ではない。
1995年版と2008年版を、同じパッケージの中で比較できること。
ここが商品価値の中心だ。
「2.0」という名前だけを見ると、旧作をHD化したリマスター版のように感じるかもしれない。
でも、実際にはそこまで単純じゃない。
新作3DCGカット、デジタル処理、音響の再構築、新規アフレコなど、作品を構成する複数の要素へ手が入っている。バンダイナムコグループの当時の資料でも、1995年版を13年ぶりに「バージョンアップ」した作品として案内されている。
僕はこのBOXを、いわゆる「完全版」を買う商品だとは考えていない。
むしろ、1995年の押井守と2008年の押井守が、同じ映画にどう違う答えを出したのかを見るためのBOXだと思っている。
Blu-ray BOXには何が入っている?本編2枚・特典BD・CDを確認
『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは、大きく分けるとBlu-ray Disc3枚+オーディオCD1枚+特製ブックレットという構成だ。
「4枚組」とだけ覚えるより、Blu-rayが3枚、そのほかにCDが1枚と理解しておいたほうが、中古品の欠品確認では間違いにくい。
1枚目は『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』
中心になるのが、2008年7月12日に劇場公開された『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』だ。
2層Blu-ray Discに1080p、MPEG-4 AVCで収録され、日本語音声はDolby TrueHD 6.1ch。一部はリニアPCMステレオとなる。劇場予告も映像特典として収められている。
ここで重要なのは、「Blu-rayだからきれい」というだけじゃない。
2.0版自体が、1995年版へ新しい映像と音を加えた別バージョンなんだ。
画面の色味。
一部カットの3DCG。
エフェクト。
効果音。
声の芝居。
これらが変わるため、ストーリーを知っていても鑑賞体験はかなり違ってくる。
2枚目には1995年版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』
BOXのもう一本の柱が、1995年公開のオリジナル版だ。
しかも簡易的なおまけ映像ではない。
発売時の案内では、2007年8月発売の商品「BCXA-0005」に含まれていたオリジナル版Blu-rayと同内容とされている。
これは商品設計としてかなり重要だと思う。
もし2.0だけを「最新版」として収録していたら、観客は変更後の映像しか確認できない。
でも旧版が丸ごと残っているから、
「ここはCGになった」
「色が違う」
「この効果音は前のほうが好き」
「人形使いの声でこんなに印象が変わるのか」
と、自分の目と耳で判断できる。
映像作品のリニューアルって、どうしても「新しい=上位版」という売り方になりやすい。
でも『攻殻機動隊2.0』の場合は、旧版を同じBOXへ残したことで、新旧を競わせるのではなく、比較する楽しみそのものを商品化したように見える。
これは発売から長い時間が経った今ほど面白いポイントだ。
3枚目はメイキング「攻殻機動隊2.0 映画再誕生 -REBORN-」
特典Blu-ray Discには、メイキング映像「攻殻機動隊2.0 映画再誕生 -REBORN-」が収録されている。
販売情報では特典映像は約42分とされ、新しい『攻殻機動隊』を作る工程を追える内容になっている。
僕は、この特典DISCこそBOX版を選ぶ大きな理由のひとつだと思う。
2.0を見た人の中には、「なぜ完成済みの名作へここまで手を入れたんだろう?」と感じる人もいるはずだ。
とくに一部の3DCGは、1995年の手描き作画と質感が明確に違う。
そこだけ取り出して見れば、「前のほうが自然だった」と感じても不思議じゃない。
でも制作工程を知ると、2.0が単に「古くなった絵を新しくしてみた」という企画ではなかったことが見えてくる。
押井守監督自身も当時、制作環境やアニメーション技術の継承について問題意識を語っていた。実機レビューでも、特典映像や公開時の発言を通じて、アニメーターの技量や制作体制に対する監督の問題意識が紹介されている。
ここは作品を見るうえでかなり大事だ。
「CGが好きか嫌いか」と「なぜCGに置き換えようとしたのか」は別の話だからね。
制作意図を知ったからといって、変更を好きになる必要はない。
むしろ理由を知ったうえで、それでも「僕は旧版のほうが好き」と判断できる。
そのほうが批評としてずっと健全だと思う。
新録オーディオCD「SOUND COLLAGE」と特製ブックレット
BOXには新録オーディオCDも封入されている。
商品情報では「攻殻機動隊2.0 SOUND COLLAGE」とされ、オリジナルサウンドトラックのダイジェストや、SOUND STORY Remixなどを収めた特製CDとして案内された。
さらに特製ブックレットも付属する。
ここは中古品を探す人にとって重要だ。
本編BDが3枚そろっていても、CDだけない。
ブックレットが抜けている。
外BOXが欠品している。
そんな状態は十分あり得る。
本編を見るだけなら、CDや冊子がなくても困らない。
一方で、BOXという商品の完成状態を集めたい人には欠品の影響が大きい。
鑑賞目的なのか、資料・コレクション目的なのか。
中古を選ぶ前にここを決めておくと、必要以上に高い個体を追いかけずに済む。
『攻殻機動隊2.0』は1995年版から何が変わった?
結論から言えば、『攻殻機動隊2.0』はストーリーを作り直したリメイクではなく、完成済みの映画へ映像・音響・演技の再構築を施したバージョンだ。
2008年当時の資料では、新作3Dカットやデジタル処理、新規アフレコ、6.1chサウンドなどが主要な変更点として紹介されている。
1995年版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』とは?
そもそものオリジナル版は1995年公開。
原作は士郎正宗、監督は押井守、脚本は伊藤和典、音楽は川井憲次。アニメーション制作はProduction I.Gが担当した。
電脳化や義体技術が普及した社会を舞台に、公安9課の草薙素子たちが「人形使い」と呼ばれる存在を追っていく。
でも、この映画を単なるサイバー犯罪捜査ものとして説明すると、半分くらいしか伝わらない。
「記憶が改変できるなら、自分を自分たらしめるものは何なのか」
「身体が人工物になっても、人間は人間なのか」
「ネットワーク上で自我を獲得した存在を、生命ではないと言い切れるのか」
こうした問いが物語の底に流れている。
だからこそ僕は、『攻殻機動隊』ほど「映像技術を変えること」自体が作品テーマと結びついてしまう映画も珍しいと思っている。
人間と機械の境界を描いた作品を、13年後に新しいデジタル技術で再構築する。
作品の内容と、作品を作り直す行為そのものが似た問いを抱えている。
これが2.0を面白くしている最大の理由のひとつだ。
新作3DCGで身体やメカの質感が変わった
2.0で最も目につきやすい変更は、新作3DCGだろう。
一部のメカや背景だけでなく、草薙素子を含むキャラクター表現にもCGが使われた場面がある。
とくに象徴的なのが冒頭だ。
高層ビルから素子が飛び降り、光学迷彩を使う一連の映像は、1995年版を知っている人ほど違いを感じやすい。
旧版の素子には、セルアニメ特有の線や塗りの質感がある。
義体でありながら、画面上ではどこか生々しい「身体」に見えるんだ。
一方、2.0のCGは表面が滑らかで、造形物としての精度が高い。
その結果、僕には素子の肉体が人工物であることが旧版より強く前へ出ているように見える。
ただし、そこには交換条件もある。
人工物らしさが増す一方、周囲の手描き作画との差も意識しやすくなる。
これは2.0の面白さであり、評価が割れやすい部分でもある。
新しい技術を入れれば、自動的に作品が自然になるわけじゃない。
技術が目立たなくなる場合もあれば、逆に「ここはCGだ」と観客へ意識させてしまう場合もある。
そして『攻殻機動隊』では、その2Dと3Dの境界までが、人間と人工物の境界というテーマに奇妙に重なって見える。
偶然まで含めて、すごく『攻殻』らしい。
色とデジタルエフェクトで都市の温度も変わる
2.0は単にCGカットを差し替えただけじゃない。
全編へデジタル処理が施され、光やエフェクト、画面全体の印象も変わっている。
僕が旧版と2.0を交互に見るとき、かなり大きな違いとして感じるのが「都市の温度」だ。
1995年版には、青緑系の冷たい空気や湿度を感じさせる場面が多い。
ビルも道路も広告も人間も、巨大な都市の中へ沈んでいるように見える。
一方の2.0は、赤やオレンジ、発光感のある画面が強く印象に残る。
同じ未来都市でも、旧版が人間を飲み込む巨大な環境に見えるとすれば、2.0は情報そのものが発光している巨大な装置に近い。
これは僕の見方だけど、色彩の違いを「昔っぽい色か、新しい色か」だけで比べるのは少しもったいない。
色は観客と世界の距離を決める。
青く暗い街なら、そこに孤独や静けさを感じるかもしれない。
暖色の光が強ければ、都市そのものが観客へ迫ってくる感覚が生まれる。
同じ背景でも色を変えれば、ドラマ上の意味まで少し動く。
2.0の比較でぜひ見てほしい部分だ。
『攻殻機動隊2.0』は音も違う?6.1ch化と再アフレコの意味
2.0で僕が映像以上に注目したいのが、音響の全面的な再構築だ。
2.0版のBlu-rayにはDolby TrueHD 6.1chが収録され、制作時にはスカイウォーカーサウンドで音が作り直されたことも当時報じられている。
これは単なる「音質アップ」と考えると本質を逃す。
『攻殻機動隊』は、情報が目の前からだけ入ってくる世界ではない。
電脳通信によって、物理的に離れた相手の声が直接意識へ入ってくる。
都市のどこにいてもネットワークと接続され、身体の外側にある情報が自分の一部のように流れ込む。
そんな作品だからこそ、前後左右へ音場が広がるサラウンドとの相性がいい。
観客の周囲から環境音や機械音が聞こえるだけで、「画面を見ている」というより「都市の情報空間へ置かれている」感覚が強まるんだ。
個人的には、2.0で最も素直にアップデートの意味を感じやすい部分だと思う。
効果音は「高音質化」だけではない
ここで大事なのは、旧版の音源をそのまま高解像度化しただけではないということ。
効果音自体も再設計されているため、同じ映像でも受ける印象が変わる。
たとえば終盤の戦闘。
旧版では武器の連射速度や鋭さが恐怖につながる場面でも、2.0では一発ごとの質量や空間の響きが強く感じられることがある。
僕自身は、旧版には「速度による怖さ」、2.0には「重量による怖さ」があるように感じる。
もちろん、これは再生環境によっても印象が変わるし、僕の主観でもある。
でも重要なのは、6.1chになったから2.0のほうが優秀、という単純な序列ではないことだ。
何を強調して聞かせるのか。
どの音に恐怖を感じさせるのか。
音響も演出だから、変更すれば物語の感触も変わる。
ここを意識すると新旧比較が一気に面白くなる。
人形使いは家弓家正から榊原良子へ
そして音の変更で絶対に外せないのが、人形使いの声だ。
1995年版では家弓家正。
2.0では榊原良子が演じている。
2.0公開時、榊原良子は、押井守監督から今回は女性で演じたいという意向を伝えられたことや、家弓家正が作った強烈な人物像を意識しながら自分なりの解釈を組み立てたことを舞台挨拶で語っている。
この変更は、キャスト欄の一行以上に大きい。
1995年版では女性型の義体から、家弓家正の低く男性的な声が聞こえる。
画面で見えている「身体」と、耳から入ってくる「人格の印象」が一致しない。
観客はそこで、「この身体を見た目だけで女性だと思っていいのか?」という違和感を突きつけられる。
人形使いは、そもそも生身の身体を本質とする存在ではない。
だから外見と声のずれが、その存在の異質さを一瞬で伝えていた。
一方の2.0では榊原良子の声へ変わる。
女性型義体と声の表面的な距離は小さくなる。
その代わり僕には、草薙素子と人形使いが互いを映す二つの存在のように聞こえやすくなった。
旧版は「身体と人格の断絶」が強い。
2.0は「素子と人形使いの連続性」が強く感じられる。
どちらが正しいという話じゃない。
むしろ同じ台詞、同じ筋書きでも、声ひとつでテーマの焦点がここまで動くことが面白い。
脚本って、文字だけでは完成しない。
誰が、どんな声で、どんな身体から言葉を発するか。
そこまで含めて物語になる。
『攻殻機動隊2.0』は、そのことをすごく分かりやすく見せてくれる。
1995年版と2.0版はどちらを見るべき?比較すると分かる3つのポイント
初めて『GHOST IN THE SHELL』を見る人に「1995年版と2.0、どっちが上?」と聞かれたら、僕は優劣では答えない。
できるなら1995年版を先に見て、そのあと2.0を見る。
これが一番違いを楽しみやすいと思う。
理由は、2.0がオリジナルを土台にした再構築だからだ。
変更前を知っているほど、「何を残して、何を変えたのか」が見える。
比較するなら最初に見るべきは冒頭
ひとつ目は、草薙素子が高層ビルから飛び降りる冒頭。
ここは身体の描き方の差が分かりやすい。
旧版の作画にある線や肉体感。
2.0のCGが持つ人工的な滑らかさ。
物語上では同じ「完全義体の草薙素子」なのに、映像技法が違うだけで身体の存在感まで変わる。
次に都市のモンタージュ
ふたつ目は、街そのものを見せるカット。
『攻殻機動隊』では都市が単なる背景ではない。
人間が巨大なネットワークへ取り込まれた社会そのものを、街の密度や看板、水面、群衆、建築で見せている。
だから色調や光が変わると、世界観そのものの読み方も変わる。
旧版では「人間が都市へ沈んでいく」感じ。
2.0では「情報が都市からあふれ出す」感じ。
僕にはそんな差が見える。
最後は人形使いの声
三つ目が、やっぱり人形使い。
家弓家正版と榊原良子版を続けて聞くと、「声優変更」という言葉では片づけられないくらい印象が違う。
画面に映っている身体を何者だと認識するのか。
素子との関係を対立と見るのか、連続と見るのか。
観客自身の解釈が変わる。
この三つを比べるだけでも、2.0が単なるリマスターではないことは十分伝わるはずだ。
中古の『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは何を確認すべき?
中古で探すなら、価格より先に規格品番「BCXA-0101」と付属品を確認したい。
2.0単品Blu-rayは「BCXA-0100」なので、BOXを探している人はここを混同しないよう注意しよう。
確認したいのは以下のポイントだ。
- 規格品番が「BCXA-0101」か
- 2.0版本編Blu-rayがあるか
- 1995年版本編Blu-rayがあるか
- メイキング特典Blu-rayがあるか
- 新録オーディオCDがあるか
- 特製ブックレットがあるか
- 外BOXが付属しているか
- ディスクに大きな傷や再生不良の記載がないか
- 販売店の商品説明で欠品の有無が明記されているか
ここで一番ありがちな混乱は、「Blu-ray BOX」と「2.0単品版」が検索結果で混ざることだ。
BOXはBCXA-0101。
2.0単品Blu-rayはBCXA-0100。
DVDは別規格になる。
商品名の一部だけで判断せず、品番を見る。
古い映像ソフトを中古で買うとき、これはかなり有効な方法だ。
また、BOXは初回限定生産商品として発売されたため、2026年時点で発売当時と同じように新品が常時供給されている商品とは考えないほうがいい。
実際、現在も商品ページが残っている量販店では「予定数の販売を終了」と表示されている例がある。
ただし、中古価格や在庫は店舗、時期、付属品、外箱の状態で変わる。
「この値段なら必ず買い」と固定的な基準を作るより、自分の目的で判断したほうがいい。
本編を見たいだけなら、外箱に多少の傷みがあっても問題ない。
資料として持ちたいなら、CD・特典BD・ブックレットまで完品に近いものを優先する。
コレクションとして棚に置きたいなら、さらに外BOXの状態まで確認する。
同じ商品でも、何に価値を置くかで“良い中古品”の条件は変わるんだ。
『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは今見る価値がある?
ここからは僕自身の考察になる。
2026年の今、このBOXを「最新技術で『攻殻機動隊』を見るための商品」と説明するのは、もう少し違うと思っている。
僕が面白いと感じるのは、1995年に描かれた未来を、2008年のクリエイターがどう更新しようとしたのかまで保存されていることだ。
1995年から2.0までは13年。
そして2008年から現在までは、それ以上の時間が過ぎている。
つまり今の僕たちは、
1995年の制作陣が考えた未来。
2008年の制作陣が考えた「1995年版のアップデート」。
そして2026年から見た、その二つの未来像。
この三層を同時に見られる。
ここが発売当時には存在しなかった、このBOXの新しい価値だと思う。
2.0は「完全版」より「13年後の別解」と見ると面白い
僕は2.0を、1995年版の欠点を直した完成版として見る必要はないと思っている。
押井守監督が13年後に同じ作品へ提出した、もうひとつの演出解釈。
そのくらいの距離感がちょうどいい。
CG化した素子が好きなら、それでいい。
旧版の手描きのほうが身体性を感じるなら、それもいい。
2.0の暖色系の画面が好きでもいいし、旧版の湿った青緑が忘れられなくてもいい。
大事なのは、「新しいものを好きにならなければならない」と考えないことだ。
技術更新と作品評価は別物だからね。
むしろ二つを並べることで、「自分はアニメーションの何を好きなのか」が見えてくる。
線なのか。
色なのか。
音なのか。
演技なのか。
都市の空気なのか。
キャラクターの身体感覚なのか。
このBOXは、その答えを探す教材としてかなり面白い。
映像の違和感すら『攻殻機動隊』のテーマと重なって見える
僕が改めて面白いと思うのは、2.0のCGについて語られる「手描きと質感が違う」という感覚だ。
普通の映画なら、それは単純に映像表現上の統一感の問題として終わるかもしれない。
でも『攻殻機動隊』は違う。
この作品は最初から、「身体が別物へ置き換わったとき、それでも私は同じ私なのか」を扱っている。
なら、1995年の映像の一部が2008年の別技術へ置き換えられた2.0そのものを、
「身体の一部を交換された映画」
と考えることもできる。
物語の骨格は同じ。
記憶も同じ。
多くの作画も同じ。
でも一部の「身体」は変わっている。
それでも同じ『GHOST IN THE SHELL』なのか。
それとも別の作品なのか。
僕には、この問いそのものが草薙素子の抱えている問題と妙に重なって見える。
もちろん、制作陣がそこまでを意図していたと断定するつもりはない。
これはあくまで、二つの版本を並べたときに生まれる僕自身の読み方だ。
でも、こういう解釈が自然に立ち上がること自体が『攻殻機動隊』という作品の強さなんだと思う。
音響の再構築は「情報に囲まれる世界」と相性がいい
一方、2.0で僕が比較的すんなり受け入れやすいのは音響だ。
サラウンド化というと「後ろから音がして迫力が増した」という話になりがちだけど、『攻殻機動隊』ではもう少し意味が深い。
この世界の人間は、常に情報に接続されている。
声は口からだけ届かない。
通信は身体の外側にある端末だけで行われない。
視覚、聴覚、記憶、ネットワークの境界が曖昧になっている。
そんな世界を描くなら、観客自身も前方のスクリーンだけでなく、周囲から音を浴びるほうが世界観へ入りやすい。
だから僕は、2.0の6.1ch化を「スペックを豪華にした変更」以上のものとして評価したい。
情報が身体の外から侵入してくる作品だから、音場が身体の周囲へ広がることに意味がある。
ここは2.0の再構築の中でも、テーマと技術がきれいにつながった部分だと感じる。
特典DISCは「好き嫌いを言語化する」ために役立つ
そして、このBOXを持つなら特典DISCも見てほしい。
2.0のCGや色に違和感を覚えた人ほど面白いと思う。
制作意図を知ったからといって、評価を変える義務はない。
「こんなに苦労して作ったんだから好きにならなきゃ」なんて考える必要もない。
作品への評価と制作現場への敬意は別だからだ。
ただ、背景を知れば自分の感想を一段深くできる。
「なんとなく旧版のほうが好き」
から、
「旧版では手描きの線が義体なのに生々しい肉体感を作っていて、そこが好き」
へ。
「2.0はなんとなく派手」
から、
「暖色と光の処理によって都市が情報装置のように迫ってくるところが面白い」
へ。
言葉にできる。
僕はアニメを深く見るって、専門用語をたくさん知ることじゃないと思っている。
自分がなぜ好きなのか、なぜ引っかかったのかを、一歩ずつ言葉にできること。
その意味で、新旧2作品と制作資料を同じBOXにまとめた『攻殻機動隊2.0』は、作品研究の入口としてかなり優秀なんだ。
まとめ:『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXの価値は新旧を比べられること
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXは、2008年12月19日に初回限定生産で発売された商品だ。
規格品番は「BCXA-0101」。発売時公表価格は13,440円(税込)で、2008年版『攻殻機動隊2.0』と1995年版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、メイキング特典Blu-ray、新録オーディオCD、特製ブックレットをまとめて収録している。
2.0では、新作3DCG、デジタル処理、6.1ch音響、新規アフレコなどが導入された。
人形使い役も1995年版の家弓家正から榊原良子へ変わっている。
だから、このBOXを単なる「高画質化された旧作」と考えるともったいない。
同じ物語を、1995年と2008年という異なる制作時点から見比べられること。
そこに価値がある。
冒頭の素子を手描きとCGで比べる。
都市の色と光を比べる。
戦闘の効果音を聴き比べる。
家弓家正と榊原良子の人形使いから、身体と人格の関係を考える。
そうやって二つの版本を往復すると、『GHOST IN THE SHELL』という一本の映画が、実は複数の解釈を抱えていることが見えてくる。
僕は2.0を「1995年版を超えた最終完成形」と決めつける必要はないと思う。
13年後の押井守が、自分自身の映画へ提出した別解。
その視点で見ると、旧版を好きな人も2.0を好きな人も、かなり豊かな比較ができるはずだ。
中古で探す場合は「BCXA-0101」を確認し、2本の本編Blu-ray、特典Blu-ray、新録CD、ブックレット、外BOXの有無をチェックしたい。
価格や在庫、付属品の状態は店舗や時期で変わるため、購入時点の商品説明を必ず確認してほしい。
よくある質問
『攻殻機動隊2.0』Blu-ray BOXには1995年版も収録されていますか?
収録されている。
2008年版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』だけでなく、1995年公開のオリジナル版もBlu-rayで同梱されている。旧版BDは、2007年に発売された商品に含まれていたBlu-rayと同内容として案内された。
そのため、映像、色彩、音響、アフレコなどを同じ環境で見比べられるのがBOX最大の特徴だ。
『攻殻機動隊2.0』は1995年版のHDリマスターですか?
単なるHDリマスターではない。
新作3DCGカットやデジタル処理、音響の6.1ch化、新規アフレコなどが行われており、人形使い役も家弓家正から榊原良子へ変更された。
ストーリーの基本的な流れを保ちながら、映像と音の演出を作り直した「リニューアル版」と考えるのが分かりやすい。
中古のBlu-ray BOXを買うときは何を確認すればいいですか?
まず規格品番が「BCXA-0101」であることを確認したい。
そのうえで、2.0版本編BD、1995年版本編BD、メイキング特典BD、新録オーディオCD、特製ブックレット、外BOXが揃っているかをチェックするといい。
中古価格、在庫、付属品、商品の状態は販売店や時期によって変わるため、注文前には最新の商品説明を確認してほしい。
神崎悠真
アニメ批評家|脚本研究家|ファンマーケター



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